メディア・エンターテインメント業界の巨大企業の間で、YouTubeという「結びつける役割」を原動力として、デジタルとリニアといった異なるプラットフォームの利点を活用する新たな好循環が生まれつつあるーー。

米エンターテインメント業界誌バラエティー(Variety)は、10月15日に閉幕した世界最大級のコンテンツ国際見本市「MIPCOMカンヌ」を通じて、こうした実態が浮き彫りになったと分析している。

「メディアの地図製作者」と称される業界アナリストのエヴァン・シャピロ氏はセッションで「私たちはテレビがストリーミングに1対1で置き換わると考えていたが、それは起こらなかった」と指摘。視聴者の性質が変化していることを踏まえ「携帯電話とテレビを組み合わせた、パーソナライズされたテレビの時代」の到来を告げた。

NBCユニバーサルのプラットフォーム配信・パートナーシップ担当プレジデントであるマット・シュナース氏は別のセッションで「YouTubeを皮切りに、ソーシャルメディアプラットフォームを活用して視聴者をライブ視聴へと誘導する取り組みは、結果に表れている。YouTubeはさらなる成長につながるもの」と評価。BBCも、YouTubeチャンネルを増やす方針を示した。

YouTubeのメディア・スポーツ部門グローバル責任者であるジャスティン・コノリー氏は「YouTube TV」を通じて有料テレビのエコシステムとより深く結びつくにつれて、自社が繁栄していると強調。「パートナーが成功してこそ、私たちも成功できる」と述べた。

(文:坂本 泉)

榎本編集長「動画配信とテレビの「1対1の置き換え」予測は、なぜ外れたのか。答えは、視聴者が技術ではなく気分で観ているからだろう。業界は「新技術が旧技術を駆逐する」という供給側の論理で未来を描いたが、視聴者の一日には複数のモードがある。観たい作品を選び抜く夜もあれば、流しておきたい夜もあり、生中継を皆と同時に観たい夜もある。オンデマンド配信は最初のモードしか満たせず、「テレビ的な気分」は空席のまま残った。だからNetflixやApple TVはスポーツ中継やライブ配信に力を入れ、テレビの領分を取り込み始めた。逆にテレビ側は動画を武器に変えつつある。NBCユニバーサルはYouTubeに番組の断片を流して本編のライブ視聴へ誘導し「結果に表れている」と公言、BBCもYouTube上のチャンネルを増やす方針だ。敗れたのはテレビ局ではなく「視聴は一種類」という前提の方である。予測の更新とは、視聴者理解の更新だったと言えそうだ。」