助手席から声で指示を出し、AIが演じる「免許取りたての妹」に運転を教える。Steamで無料デモ版を配信中のインディーゲーム『妹に運転を教える』が、思わぬ形で話題になっている。というのも、人気が出すぎたことで、開発元がAIの利用料に苦しんでいるのだ。
人気が出るほど膨らむ請求書
開発元のEasy Foxは10月7日、デモ版のプレイヤー数が1か月で約20倍に増え、AIの利用料が1日1,000ドル(約16万円)を超えていると明かした。その後、Game*Spark(国内ゲームメディア)のインタビューでは、銀行融資に踏み切った経緯も語っている。開発当初は「少なくとも、借金までしてゲームを作るのはやめよう」とチーム内で約束していたという。
その背景にあるのは、生成AIならではのコスト構造だ。デモ版では妹の運転、表情、セリフをAIが決めており、プレイヤーが話しかけるたびにクラウド上のAIを呼び出す。呼び出すたびに利用料がかかるため、遊ばれるほど費用が増える。さらに主力のGoogle「Gemini 2.5 Flash」は利用上限に阻まれ、割高な代替モデルへの切り替えを余儀なくされた。
サーバーを必要としない従来のゲームは、一度完成すれば何本売れても1本あたりの追加コストはほぼゼロだった。だからこそ、「一度買えばずっと遊べる」買い切り型が成り立ってきた。ところがAIを組み込んだ瞬間、遊ばれる時間そのものが原価になる。無料デモ版は、売上ゼロのまま原価だけが積み上がる状態だったわけだ。
先行事例が示す3つの解き方
そして、この問題は今に始まったことではない。2019年に登場したAIテキストRPG『AI Dungeon』の開発元Latitudeは、2021年のピーク時にOpenAIとAWSへ月20万ドル近くを支払っていたとされ、同年末にはより安価なAIモデルへ切り替えた。
この問題の解決策は、大きく3つに分かれる。1つ目は利用量に応じた課金だ。AIキャラクターと会話するゲーム『AI2U』は、購入時に一定量の「トークン」を付与し、使い切ったらゲームを買い直す方式を採ったが、のちにトークン制を廃止して買い切り型へ移行した。
2つ目は、AIをプレイヤーのPC上で動かす方式。韓国KRAFTONの『PUBG Ally』は、20億パラメータ規模の小型言語モデルを端末側で動かしている。3つ目は定額制との組み合わせで、Googleが10月7日(現地時間)に公開したAIゲーム制作基盤「Playground」は、制作機能の利用枠を同社のAIサブスクリプションと連動させている。
Easy Foxが選んだのは、想定される利用料をあらかじめ製品価格に織り込み、追加請求はしないという道だ。約8か月分のデモ運営データから平均的な利用量を割り出し、それを超えて遊ぶプレイヤーがいて収益が目減りしても、自社で負担するという。会話全体をPC上で動かす案も検討したが、満足できる会話には80億パラメータ級のモデルが必要で、多くのプレイヤーにとって要求スペックが高すぎると判断している。
「遊び放題」をどう守るか
AIキャラクターと会話できるアプリなど、生成AIを中核に据えたサービスの多くが「使われるほどコストが増える」構造を抱えている。定額制ならヘビーユーザーほど採算が悪化し、従量制なら利用者は使うたびに財布を気にすることになる。
Easy Foxは、話しかけるたびに追加料金を心配させるようなゲームにはしたくないと語る。会話そのものが面白さの核である以上、この判断は理にかなっている。
ただ、それを小さなチームの覚悟だけで支え続けるのは難しい。AIの利用料がどこまで下がるのか、端末側で動くAIがどこまで賢くなるのか。2027年1月の発売を予定する本作は、AI時代のエンタメが「遊び放題」を維持できるかを占う貴重なモデルケースになりそうだ。














