愛知・名古屋で開催中の第20回アジア競技大会で、eスポーツ日本代表が大きな成果を残した。9月26日にはパズルゲーム『ぷよぷよeスポーツ』で11歳の栗原悠輝選手が金メダルを獲得し、アジア大会史上最年少のメダリストとなった。
日本代表は9月30日までに出場した7種目をすべて終え、金2、銀2、銅1の計5個のメダルを獲得した(eスポーツ競技全体は10月2日まで)。なぜ今回の大会が日本のゲーム業界にとって特別なのか、まずは前提から整理したい。
そもそもアジア大会のeスポーツとは
アジア大会は、アジア・オリンピック評議会(OCA)が4年に1度開く総合スポーツ大会で、日本開催は1994年の広島以来32年ぶりとなる。
eスポーツは2018年のジャカルタ大会で公開競技として初めて実施された。このとき日本はコナミのサッカーゲーム『ウイニングイレブン 2018』で金メダルを獲得したが、公開競技のため国別のメダル数には含まれない。
前回の杭州大会(2023年開催)で正式なメダル競技となり、ほかの競技と同じくメダル数に加算されるようになった。ただ、杭州大会で日本はメダルに届かなかった。今大会は前回の7タイトルを上回る11種目13タイトルが採用され、日本は7種目9タイトルに代表選手を送り込んだ。
13タイトル中7本が日本メーカー・IP
今大会の特徴は、日本のゲームが数多く採用された点にある。格闘の『ストリートファイター6』(カプコン)、『鉄拳8』(バンダイナムコエンターテインメント)、『THE KING OF FIGHTERS XV』(SNK)、レースの『グランツーリスモ7』(ソニー・インタラクティブエンタテインメント)、サッカーの『eFootball』(コナミデジタルエンタテインメント)、パズルの『ぷよぷよeスポーツ』(セガ)、そしてチーム対戦の『ポケモンユナイト』だ。13本中7本が、日本企業のタイトルか日本発のIPを用いたタイトルにあたる。杭州大会では7本のうち、日本のタイトルは『ストリートファイターV』だけだった。
日本勢の5個のメダルのうち4個は、これらのタイトルから生まれている。9月23日には『eFootball』で茶谷優我選手・貴田英貢也選手組が銅メダルを獲得し、正式競技化後初のメダルをもたらした。26日は栗原選手の金に加え、3タイトルの代表1人ずつでチームを組み、タイトルを切り替えながらセットを奪い合う「対戦格闘団体戦」で、『スト6』のひぐち選手、『鉄拳8』のノビ選手、『KOF15』のスコア選手が銀メダルを獲得。決勝では韓国に2-5で逆転負けを喫した。27日には『ポケモンユナイト』日本代表がインドネシアを3-1で下し、2つ目の金メダルを手にした。
残る1個は、30日の『Identity V 第五人格』の銀メダルだ。中国ネットイースのタイトルだが、日本国内でも公式プロリーグが運営されている。日本代表は準決勝でマレーシアを破り、決勝で中国に敗れた。
五輪が見送ったeスポーツ、次の舞台は
この結果の意味は、五輪側の動きと並べるとより鮮明になる。国際オリンピック委員会(IOC)は2024年に「オリンピックeスポーツゲームズ」の創設を決め、2027年にサウジアラビアで開催する計画だった。
しかし2025年10月、同国のオリンピック委員会との提携を解消し、計画は見送りとなった。2026年5月には、IOCのeスポーツ委員会が活動を休止したと共同通信が報じている。サウジアラビアの財団が今年11月に予定していた国別対抗戦「Esports Nations Cup」も、2027年への延期が決まった。
五輪という到達点が遠のくなか、国・地域の代表が公式にメダルを争う総合競技大会として、アジア大会の重みは相対的に増したといえる。栗原選手は代表候補に選ばれた際、「次はアジア競技大会で金メダルを取りたいです」と語っていた。11歳の選手にとって、アジア大会はすでに目指すべき舞台として機能していたわけだ。
見えてきた課題
一方で、制度面の課題も浮かんだ。五輪では日本オリンピック委員会(JOC)が金メダリストに一律500万円の報奨金を支給するが、アジア大会には統一の制度がなく、各競技団体の判断に委ねられている。日刊スポーツは関係者の話として、日本eスポーツ協会(JESU)が現時点で栗原選手に報奨金を出さない見通しだと報じ、SNSでは支給を求める声が相次いだ。
日本のゲームが競技として採用され、日本の選手がそこで勝つ。自国開催のアジア大会は、その構図を正式競技の舞台で示した。同時に『Identity V』の銀は、IPの国籍だけでなく、国内に競技の場が育っているかどうかも結果を左右することをうかがわせる。選手が国を背負う舞台と、それを支える仕組みをどう整えていくか。大会後に問われるのはそこだろう。














