AI音楽はなくならず、一過性の合成音楽ビジネスと、アーティスト中心のビジネスという、2つの異なる経済圏へと分かれつつある。Digital Music News(DMN)が伝えた。

レーベル「ブルー・ドット・ミュージック」創業者のニコラス・ガン氏は「音楽業界において2種類のビジネスモデルが共存する時代に入っていることは明らかだ。一つは生成AIを軸としたきわめて一過性の強いビジネスで、DSP(デジタル配信サービス)上ではAIラベルの下、UdioなどのAI生成サイト上に存在する。もう一つは、DSP上でラベル表示なしに、あるいはDTC(ダイレクト・トゥ・コンシューマー)を通じて展開される、アーティスト中心のモデルだ」と話す。

どちらの業界も大規模に成長する可能性がある。どちらもAIを活用でき、優れた音楽を生み出すこともできるが、生み出す価値の種類が異なるため、同じビジネスとは言えない。

AI音楽の初期は、技術が機能することを実証する段階であったため、許諾の問題は「後で解決すればよい」という扱いだった。しかし、次の時代(Music AI 2.0)は、ビジネスとして成立することを証明しなければならず、権利管理システムを通過するための資産(ライセンス、出所、情報開示、より優れたメタデータ)が必要とされる。

(文:坂本 泉)
榎本編集長「AI音楽の行方について、示唆に富む見取り図が示された。レーベル創業者ニコラス・ガン氏の見立てでは、音楽業界は今、二種類のビジネスが共存する時代に入っている。一つは、生成AIを軸にした一過性の強い経済。AIラベルの下で配信され、量産と回転の速さで成り立つ。もう一つは、アーティスト中心の経済。ラベル表示なしの通常配信やファンへの直販で展開され、作家性と継続的な関係が価値の源になる。重要なのは、これが「AIか人間か」の対立軸ではないことだ。どちらの経済もAIを活用でき、優れた音楽も生める。分かれ目は、生み出す価値の種類、つまり使い捨ての便利さか、人に紐づく物語か、である。この整理は実務にも効く。禁止か受容かの二択で消耗するのではなく、自分の作品がどちらの経済で戦うのかを決め、それに合う道具と流通を選ぶ。AI論争が次の段階へ進むための、冷静な地図として氏の意見を共有しておきたい。」