2015年に発売されたRPG『ウィッチャー3 ワイルドハント』のリマスター版が、本日9月29日19時に配信される。対応機種はPC、PS5、Xbox Series X|S、Nintendo Switch 2だ。PC、PS5、Xbox Series X|S版の所有者には無料アップデートとして配信され、Switch版の所有者もSwitch 2版を無料で受け取れる。

発売から10年以上たった作品を、なぜ手間をかけて作り直し、しかも既存プレイヤーに無料で配るのか。背景には、ポーランドのゲーム会社CD PROJEKT RED(CDPR)の長期的な戦略がある。

10年たっても売れ続ける理由

『ウィッチャー3』は、ポーランドの作家アンジェイ・サプコフスキの小説を原作とする「ウィッチャー」シリーズの第3作だ。怪物退治を生業とする剣士ゲラルトが、行方不明の養女シリを探して旅をする。広大な世界と、プレイヤーの選択で分岐する濃密な物語が高く評価された。

この作品は今も売れ続けており、2026年5月には世界累計販売本数が6500万本を突破。その要因の一つが映像化だ。2019年12月にNetflixでドラマ『ウィッチャー』が配信されると、ゲームに再び人が集まった。2020年1月にはSteam版の同時接続数が10万人を超え、2015年の発売当初のピーク(9万2268人)を上回った。

「買った後も良くなる」が同社の流儀

もう一つの要因が、発売後も作品に手を入れ続ける姿勢である。2015年の発売時には、衣装やクエストなど16種類の追加コンテンツを無料で配信した。2022年12月には次世代機版を配信し、既存の所有者はXboxとPCでは無料、国内のPS5では100円でアップグレードできた。

今回のリマスターは、その延長線上にある大規模な刷新だ。グラフィックの強化に加え、戦闘やスキルツリーを刷新し、新たなフィニッシャーや拡充したフォトモードを搭載する。装備の性能はそのままに見た目だけを変えられる機能も加わる。過去の拡張パック『無情なる心』『血塗られた美酒』も収録され、Xboxの公式発表によれば、本編だけを持つプレイヤーにも2つの拡張パックが無料で提供される。

『サイバーパンク2077』で学んだ信頼の価値

この姿勢の重みを同社に再認識させたのが、過去の苦い失敗だ。2020年12月に発売した『サイバーパンク2077』は、旧世代機版を中心に不具合が相次ぎ、PlayStation Storeでの販売が一時停止され、返金対応にまで発展した。

同社はその後、アップデートを重ねて不具合を改善し、2023年9月には拡張パック『仮初めの自由』を発売した。2022年に配信されたNetflixのアニメ『サイバーパンク: エッジランナーズ』の人気も追い風となり、評価を立て直した。2026年7月には累計販売本数が4000万本に達している。発売後の改善でファンの信頼を取り戻せば、作品は長く売れ続ける。この経験も、今回の判断を後押ししているとみられる。

無料で呼び戻し有料拡張と次回作へ

今回の無料化は単なるファンサービスではなく、無料になるのは既存の所有者だけで、リマスター版はこれから遊ぶ人に向けた商品として販売される。さらに2027年には、『血塗られた美酒』に匹敵する規模の有料拡張『追憶の調べ』が控えている。リマスターで既存のファンを呼び戻し、新しい遊び手も取り込んだうえで、有料の拡張へとつなげる流れだ。

『ウィッチャー4』の開発チームは2026年5月時点で513人に拡大したが、発売時期はまだ明らかにされていない。くわえて、大型新作の開発には長い年月がかかる。その空白の期間に、過去作で収益とファンの熱量を保ち続けることは、次の作品への橋渡しにもなる。10年以上前の名作を、いかに「現役」であり続けさせるか。今回のリマスターは、その問いに対するCDPRなりの答えといえる。